「DOWN TO ART ダウン症のアーチスト」展開催にあたって

[展覧会のパンフレットより]
●キュレーター・小出由紀子さんとの出会い
 本展の開催は、キュレーターの小出由紀子さんとの出会いから始まりました。ヘンリー・ダーガーやビル・トレイラーなど、欧米のアウトサイダーアートを日本に紹介するとともに、日本の知的障害者の創作を新しい視点から見直すべく、多くの展覧会や出版物を手がけてこられた、小出さん。彼女が企画した展覧会のひとつに「メタモルフォーシス」展(東京、資生堂ギャラリー、2001年)がありました。ダウン症のアメリカ人女性、ジュディス・スコットさんの代表作50点を紹介した展覧会で、知的な障害と聾唖のハンディをもつジュディスさんが作る神秘的な作品群は、言葉では語られることのない内面世界をみごとにアートに昇華して、観客の心を激しく揺さぶりました。当協会からも多くの会員が足を運び、その、アートとしての偉力に衝撃を受けました。


●「ダウン症児者の芸術創作活動」の展開

 (財)日本ダウン症協会では、日本自転車振興会(競輪公益資金)の補助を得て、平成12年度から5年間にわたり「ダウン症児者の芸術創作活動」事業を実施しています。この事業は「ダウン症をもつ人たちにさまざまな芸術活動や創作活動の発表の場を提供することにより、広くダウン症に関する社会的啓発を目指す」ことを目的にしています。過去3回の「ダウン症児者の芸術創作活動」は次のとおりです。
 
・第1回 平成12年度 東京ディズニーランドにおけるステージパフォーマンス
(合唱、バンド演奏、ジャズダンス)
・第2回 平成13年度 八ヶ岳ロイヤルホテルと山梨県立美術館における詩と絵のコラボレーション展
・第3回 平成14年度 神奈川県民ホールにおけるヒップホップのダンスライブ

 そして、第4回の企画を検討する中で、「ダウン症をもつ人の、アートとして力ある作品をもっと観たい、そして一般の方々にも観てもらいたい」という思いが募っていきました。この思いから、小出さんに企画協力をお願いすることになったのです。


●純粋なアートとしての展覧会

 障害者アート、アウトサイダーアート等の言葉をよく耳にします。しかし、「障害者」という前置きがなくても、何ら説明を付けなくても、感動を与えうる作品が存在することを知ったのは嬉しい驚きでした。さらに、小出さんのリサーチを通して、日本国内にも独創的な創作をする人たちがいることを知り、今年度は、彼らの作品を多くの方々にご覧いただく展覧会を開くことを決めました。


●“ダウン症”と“アート”の狭間で

 「ダウン症児者の芸術創作活動」の本来の意義から考えると、展覧会に「ダウン症」という言葉を使わないわけにはいきません。しかし一方では、前置きなしで、純粋なアートとして鑑賞してほしい。自己矛盾とも言える状態に陥りました。ここは、みなさまに判断を委ねることにさせていただきたいと思います。作品がもつ圧倒的なパワーの前には、それすらも愚問に感じていただけるのではないでしょうか。