JDSのビジョン
力を合わせていきましょう!

ダウン症をもった人とその家族のみなさまへ

 
 わが国において、心身に障害を持つ人々とその家族は、長い間無知や偏見の壁に阻まれてきました。そうした風潮の中で、「障害児」「障害者」と呼ばれる人たちの親や家族は、手をつなぎ合って、自分たちの生活と権利を守ろうと努力を重ねてきました。
 「親の会」に代表されるこのような組織の活動は、全国各地の施設・専門機関や様々な制度を作り出す原動力ともなり、また、はっきりとした形にはならなくとも、周囲の人たちの意識を変えていくという大きな成果をあげてきました。

 新しい世紀を迎え、社会のありかたが大きく転換しようとしています。「多様化」「情報化」「国際化」が叫ばれる時代にあって、福祉・医療・教育も大きな変革を迫られています。多くの施策が中央から地方へ移管され、様々な行政サービスの窓口が、国から都道府県、市町村へと移ってきています。これにあわせて、施設や病院への入所・入院が中心だった専門サービスには地域化が求められ、在宅での生活の援助が強く叫ばれ始めています。
 すなわち、ハードウエアの重視からソフトウエアの重視へと視点はうつり、「保護と収容」を基本にしていた障害者政策は「選択と自立」へ向かうものとなってきています。

 このような時代の流れを背景として、私たちは1995年6月、「日本ダウン症協会」を設立し、2001年4月より「財団法人 日本ダウン症協会」(JDS)としてスタートしました。全国には、ダウン症をもった子どもや大人たちとその家族を中心にした「会」が数多く存在し、それぞれの地域の特性に応じた活動を続けています。
 JDSは、そのような各地の活動が協会の活動とあいまって、さらに充実したものになっていくことを願い、以下のようなビジョンをもって運営をしていきたいと考えています。

 JDSは、ダウン症をもった人をはじめとする染色体異常や知的障害児・者の医療・保険・福祉・教育・就労など、ライフサイクルの全般にわたって、関連するそれぞれの情報をできる限り広範に集めて、整理・活用していきます。
 協会では、たったひとりのダウン症をもった当事者やたったひとつの家族にはじまり、国際的な視野を含めて、各種の専門機関・専門家にいたるまで、あらゆる立場からの情報の発信を望んでいます。集められた情報は、利用することのできるすべての手段を通じて、協会員はもちろんマスコミや専門機関に対しても、必要に応じて提供していきます。こうした「情報センター」としての機能は、各地の会がそれぞれの地域の実情を把握する手助けになると考えます。それは「障害児・者」に対する各種の社会的サービスの地域ごとの格差を埋めていくことにつながり、必ずや各地の会の活動の充実に貢献できるものと確信しています。

 また、JDSはダウン症をもった人々やその家族の生活の向上と権利の保障につながると考えられる様々な啓発活動を行います。もちろん、ひとりひとりの生活に根ざしたさまざまな問題は、基本的には生活の基盤である各地域で解決していくべきものだと考えていますが、全国から集約された問題の中で、国勢レベルでの交渉や監視が必要な問題に対しては、その解決や実施に取り組みます。あわせて、誤謬の訂正や偏見の是正をめざした日常的な社会一般への啓発活動も行います。
 こうした活動は、ダウン症をもった人のみを対象と考えるのではなく、障害者・高齢者・子ども一般など、広く各層の生活の向上につながる視点をもって続けていくつもりです。また、各種の障害者団体・福祉団体・市民団体とも、必要に応じて積極的に連携を求めていきます。
 
 

 さらにJDSは、広域的な行政への要求や、全国的な専門家・専門機関のネットワークづくり、国際交流の窓口など、地域単位の親の会の活動では困難と考えられるような各種の活動の窓口として機能していきたいと考えます。

 「障害児・者」の家族は、自分たちが亡きあとの子どもの生活を保証するために、幾多の努力をかさねてきました。「(財)日本ダウン症協会」は、こうした先人の活動にならいながらも,子どもとともに親もきょうだいもが自分らしく生きていける社会を願って活動していきます。単に親や家族の意見を集約することだけではなく、なによりも本人たちの意思表明を支援していくことを通して、ダウン症をもった人々をはじめとする「社会的弱者」の人権を守ることをめざしていきます。

 JDSの活動は、全国各地に住むひとりひとりの方たちの生活を、直接的かつ具体的に支援するものではないかもしれません。しかし、ひとりひとりの力を大きく集めることで、新しく生まれてくるすべての子どもたちや、高齢化とともに確実に「障害者」「社会的弱者」になっていく私たち自身の将来に、今日よりもすてきな一日を贈ることができると信じています。


 以上、財団法人 日本ダウン症協会のビジョンを述べましたが、このような私たちの活動は、決して一部の人たちだけで達成できるものではありません。ぜひ、全国のみなさまのご協力と加盟とをお願いしたいと存じます。